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『予言』

2015年11月19日(木)

授業で発表した久生十蘭の『予言』という短編作品について。

せっかくなので記録。

使用した本は『久生十蘭短篇選』川崎賢子編 岩波書店

 

  • 作品概要

初出…「苦楽」一九四七年八月号

 

  • あらすじ

 主人公、安部忠良は、皆から慕われていたが、酒田の二女の知世子と婚約した。

ある時安部は、維納で精神病学の研究をしている石黒利通が、巴里の有名な画商のヴォラールでセザンヌの静物を二つ手に入れ、それを留守宅に送ってよこしたということを聞きつけた。

安部はその静物を見るために石黒の留守宅に入り浸るようになり、そのうち石黒の細君とあやしいとうわさを立てられるようになった。

その後、どうしたいきさつからか石黒の細君は自殺した。

安部は世間から悪く言われるようになり、いっそ知世子と早く結婚させてフランスにでもやってしまおうと話がまとまり、結婚式を挙げ、その次の日から船でフランスまで行くことが決まった。

石黒は結婚式の日の前に安部にこれから起こることの予言が書かれた、手紙を送り、結構式当日も安部と会ったが一言もしゃべらずに別れた。

次の日からフランスへの航海が始まったが、知世子はその航海でフェルナンデスという若いポルトガル人の男と男女の仲になっていた。

安部はその航海でのことが石黒の手紙にすべて書いてあることに気づき、それと違う道をとったが、最終的にピストルで自分を撃つことになった。

 しかし、航海での出来事は安部の夢(?)であり、大きな傷を負い、語り手は安部はもう長くないと言って物語は終わる。

 

 

  ・疑問点

 1.最後の「われわれ」と言っているのは誰か

  • この物語は語り手が何度か交代する

 

安部を客観視している語り手(友達)

「安部忠良の家には」(p27)~「そういう事実が現実にあったことだけは確かだ。」(p34-L12)

   

神視点

「翌日、三時過ぎに」(p34-L13)~「天地がぐらりとひっくりかえった。」(p49-L11)

 

安部を客観視している語り手(友達)

「余興のハープがはじまるころ」(p49-L14)~「なんともいえない気がした。」(p51-L2)

 

安部を客観視している語り手は安部の友達の一人であると考えられるが、名前は出てきていない。最後に「われわれ」と称しているのはこの人物。どういった人物か。

 

2.石黒の細君は何故自殺したのか。

 「嫌われたくらいで突きつめるような無邪気な人柄とも見えない。」

「植えた南瓜がつい瓢箪になったというようなことだったのだろう。」

 

3.石黒は何故催眠術で安部を陥れようとしたのか

 

4.P37に出てくる「福助」はにはどういった意味があるのか。

 裃を着ていることから、おそらく福助人形のこと。

 

 

発表後クラスで考察した結果。

・何故他の方法をとらず、催眠術で安倍を陥れようとしたのかについて考えられる一番の理由は罪に問われないからではないか。

「植えた南瓜がつい瓢箪になったというようなことだったのだろう。」→「瓢箪から駒が出る」ということわざがあり、それと同じ意味ではないのか。瓢箪から駒が出るとは、思いもかけないことや道理上ありえないことが起こること。また、冗談半分で行ったことが現実になること。

・p33のS選手のモデルは佐藤次郎というテニス選手だと言われている。

泉鏡花の「卵塔場の天女」(『鏡花全集』春陽堂4巻)によくないことが起きる前触れとして福助人形が出てくる。体と顔のアンバランスさが不気味

・石黒の催眠術は睨んだところから始まっていたのではなく、手紙、石黒の噂、そういうものが積み重なってかかったのではないか。